パーム油とは “ アブラヤシ ” という植物から採れる油のことです。
普段はあまり見聞きしないパーム油やアブラヤシ。
実は私たちの日常には欠かせないものの一つなのです。
誰もが必ずお世話になっているものだよ
でも、パーム油のこと、ひいてはパーム油に関わる問題があることを知らない人も多くいます。
「自分には関係ない」という人はいないので、パーム油についてまずは知ってみることからスタートしてみませんか?
パーム油とは“アブラヤシ”からとれる植物油のこと
パーム油とは “ アブラヤシ ” という植物から採れる油のことです。
一般的にヤシといえばココナッツを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、ココナッツオイル(ヤシ油)とは全く別のもの。
同じヤシ科だけど、木の見た目も少し違うよ
こちらがパーム油の原料になる実の部分。
この実から2種類の油が採れ、それぞれいろんな用途で使われます
下の写真のように、実はぶどうみたいな房となっていて果房と呼ばれます。
果房の重さは20〜40kgにもなり、さらに地上から20m以上のところになるため、収穫は重労働で危険も伴います。
アブラヤシの生育は赤道付近の熱帯地域に限られていて、現在ではマレーシアとインドネシアがパーム油の二大生産地になっています。
ちなみにココナッツはこちら
アブラヤシとは全然違うね!
世界で最も使われている植物油「パーム油」
パーム油は、世界一消費される植物油と言われています。
その理由は、主に3つ。
生産効率が非常によく、一度実ができてから20年以上も採取することができると言われています。
安定して供給できるので低価格を維持しやすく、世界中で使われてきました。
家庭で料理用の油として使うより、企業が食品を作るときの油として多く使われています
パーム油を使った製品は多岐に渡る
実際にパーム油は、こんな商品に使われています。
食品 | チョコレート、アイス、パン、マーガリン、ケーキ、カップ麺、スナック菓子、揚げ油、冷凍食品、カレー等 |
日用品 | 住宅用洗剤、洗濯用洗剤、シャンプー、歯磨き等 |
化粧品 | ファンデーションなどコスメ、日焼け止め、スキンケア等 |
あらゆる身の回りのもので使われているんだね
食品から日用品まで多岐に渡って使われているものの、原材料名には「パーム油」と記載されることはほとんどありません。
だいたいが、「植物油」「植物油脂」「ショートニング」「グリセリン」というように名前を変えて表示されています。
化粧品でパーム油由来の成分名
スキンケア用品やコスメなどの化粧品で、パーム油が使われている可能性がある成分名はこちら。
グリセリン | 保湿効果を高めるため、スキンケア商品、コスメ、ボディケア商品などに使われる パーム油由来のほか、石油由来、ヤシ由来もある |
ラウリン酸 | 「ラウリン酸」「ラウリン酸◯◯◯」などの表示名 パーム油かヤシ油由来 |
ステアリン酸 | 「ステアリン酸」「ステアリン酸◯◯◯」などの表示名 パーム油由来のほか、牛や豚由来、その他植物由来がある |
パルミチン酸 | 「パルミチン酸」「パルミチン酸◯◯◯」などの表示名 飽和脂肪酸の一つで、パーム油の主な成分 パーム油由来のほか、牛や豚由来、その他植物由来がある |
今や化粧品成分はいろんなものから作ることができるので、表の成分がパーム油由来ではない場合もあります。
ただし、天然由来 or 植物由来成分100%と表示があるものは、パーム油由来の可能性は高いと思われます。
パーム由来なのかはっきり確認したいなら、メーカーに問い合わせると教えてくれるよ
成分名が統一されていない理由
それはパーム油がいろんな成分になることができる汎用性の高さが理由。
一言でパーム油といっても、実から採れる油と種から採れる油が違います。
なので、特に化粧品で表示するときには化学的な名前で表示されたりします。
また、成分の由来について法的に表示義務がないことも理由の一つだと思います。
例えば「植物油」とだけ表示しておけば、他の植物油からパーム油に変わっても、企業側の手間やコストは変わりなし。
業界での慣習も大きく関係していそう
成分名が変わったり、パーム油という明確な表記がないため、パーム油は “ 見えない油 ” と言われています。
パーム油のメリット・デメリット
植物由来だからクリーンで万能なイメージのあるパーム油ですが、メリットがあればもちろんデメリットや問題点もあります。
主なメリット・デメリットはこちら。
それぞれ詳しく解説していきます
【メリット】効率よく大量生産が可能
パーム油は他の植物油と比べて、少ない土地でたくさんの量を採ることができます。
下の画像を見ると、菜種油やひまわり油、大豆油と比べると、パーム油が圧倒的に多く採れることがわかります。
引用:WWFジャパン「パーム油の問題とは?私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの」
大量生産できるということは、価格も安くできるということ。
また、一度苗を植えると20年以上も収穫し続けることが可能といわれています。
他の植物と違って、とても効率が良いのがわかります。
たくさん作れるから安い。
そしてパーム油の性質上、いろんなものに使えるということで、世界でいちばん使われる植物油となっているのですね。
企業から見てメリットが多い油だよね
【デメリット】健康リスクや環境破壊が問題
とりすぎによる健康リスク増
パーム油の約半分に飽和脂肪酸が含まれています。
その飽和脂肪酸によって、健康リクスが増加するおそれがあります。
飽和脂肪酸をとりすぎることで肥満になりやすく、それにともなって病気にもなりやすくなってしまいます。
パーム油は植物性の油なので健康的なイメージを持つかもしれませんが、何事もとり過ぎは良くないということですね。
輸送時に酸化防止剤が大量に使われる
パーム油を輸送するときに、酸化防止剤BHA(ブチルヒドロキシアニソール)が使用されます。
食品添加物のひとつです
BHAに発がん性があると言われていて、パーム油の安全性が疑問視されています。
パーム油の生産地は、マレーシアやインドネシア。
海を越えて輸送するにはどうしても時間がかかります。
輸送している間にパーム油が酸化してしまわないよう、酸化防止剤が大量に使われるのです。
BHAの発がん性については、ねずみなどげっ歯類に限るという研究結果もありますが疑問を持つ声もあります。
パーム油による地球規模での問題
パーム油の生産で地球規模の環境問題があります。
それが、
詳しくは次の項目でご紹介します。
パーム油問題が深刻になっている
世界中で使われているパーム油ですが、パーム油による問題が深刻化しています。
パーム油の生産地・マレーシアやインドネシアだけの問題ではなく、主にパーム油を消費している先進国の私たちにとっても責任がある問題。
でもパーム油の問題を知らない人も多いよ
また今後、地球規模で人口が増加すると言われていることから、パーム油の消費もさらに増加していくと予測。
パーム油問題は、地球に住む私たちが知っておくべき問題のひとつだと思います。
詳しく解説していきます。
熱帯林や泥炭地の破壊
パーム油のもととなるアブラヤシ農園をつくるためには、熱帯林を破壊する必要があります。
かつてマレーシアやインドネシアは熱帯林が豊かな国でしたが、熱帯林の森は驚異的な早さで減少。
引用:WWFジャパン「パーム油の問題とは?私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの」
パーム油の生産が盛んなスマトラ島では、30年前と比べると森が半分以下に減ってしまったのがわかります。
この写真はアブラヤシ農園を空から撮ったもの。
緑豊かな土地に見えるけど…
アブラヤシしかない土地は、本来の自然からは大きくかけ離れてしまっているよ
また、泥炭地の破壊も問題となっています。
熱帯林を破壊するだけでは足りず、泥炭地までも破壊し、アブラヤシ農園をつくっているのが現状です。
火災と温室効果ガスの大量発生
アブラヤシ農園をつくるために、土地を整地するのに火をつける方法(野焼き)があります。
マレーシアやインドネシアでは野焼きが禁止されていますが、野焼きが原因による森林や泥炭地での火災が多発。
近隣の国まで煙の被害がでるほど
特に乾燥させた泥炭地は燃えやすく、ただでさえ破壊した泥炭地から二酸化炭素が放出されているのに、さらに燃やすことで莫大な量の二酸化炭素が排出されてしまうのです。
野生動物の減少・絶滅危機
森林破壊が起こると当然、そこに住む野生動物の住処がなくなります。
10年前に比べるとオランウータンは80%も減ってしまったと言われるほど。
森を破壊してアブラヤシ農園をつくれば、動物たちの住処や食べるものがなくなり、命も落としてしまいます。
また、アブラヤシ農園に迷い込んだ動物は害獣として駆除対象に…
象が農園を荒らしてしまったり、人を死なせてしまう事件も起こっています
なんの罪もない動物が住む場所を奪われてしまい、絶滅危機に追い込まれている。
とても悲しいことが起こっています。
劣悪な労働環境や汚職の温床
企業の大規模アブラヤシ農園では、児童労働や低賃金で働く強制労働が問題となっています。
アブラヤシ栽培から収穫まではとても重労働。
小さな子どもが重いアブラヤシの果房を運んでいたり、危険な労働を強いられ、学校に行くこともできません。
また、政府が正しく機能していないことがあり、汚職が蔓延していることも指摘されています。
汚職によって無許可の農園開発や地元住民の住まいが奪われたり、禁止である野焼きが行われたり、問題が引き起こされています。
汚職がパーム油問題を加速させているといってもいいと思います
パーム油問題のために私たちができること
パーム油をまったく使わなければ良いのかというと、そうではありません。
その理由は、
パーム油ほど生産効率が良い植物油はありません。
他の油で代わりをするには、たくさんの農地が必要になります。
パーム油1トン生産するためには0.26ha必要ですが、大豆油1トン生産するには2haも必要になると言われています。
引用:WWFジャパン「パーム油の問題とは?私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの」
また、アブラヤシ農園のほとんどは家族で小規模農園を営み、経済的に苦しい思いをしている家族も少なくありません。
今パーム油を使わなくなってしまうと、アブラヤシ農家はさらに経済的に貧しい思いをすることになるでしょう。
パーム油が生活のすべてという暮らしをしている人々が多くいます
RSPO認証の商品を選ぼう
私たちができることのひとつに、RSPO認証取得済みの商品を選ぶことがあります。
このマークが目印!
RSPO認証を取得している商品は、パッケージの裏面などにマークが記載されています。
液体の洗剤や、食品のパッケージでRSPO認証マークがあるものは、なるべく選んでいきたいですね。
日清食品では2017年よりRSPOに加盟し、カップヌードルをはじめとした商品でRSPO認証パーム油を使っています
引用:日清食品公式ページ『森をまもるカップヌードル?「カップヌードル」を作る全工場で、環境と社会に配慮した「RSPO認証パーム油」を2020年2月から使用開始』
化粧品の場合は、COSMOS認証の商品を選ぶことでRSPO認証パーム油を選ぶことができるので、COSMOS認証マークを目印に選んでみましょう。
パーム油フリー商品を選ぼう
パーム油をまったく使っていない商品を選ぶということも、私たちにできることのひとつ。
日常で使うパーム油を少し減らすことで、無意味な農園開発を減らすアクション!
全商品パームオイルフリーのスキンケアブランド・ラヴィステラでは、日焼け止めもパーム油を使っていません。
引用:ラヴィステラ公式
ラヴィステラでは独自にパームオイルフリーの表記をつけているよ
また、認証やパームオイルフリーの表記がない化粧品の場合、ひとつひとつ成分名を調べる方法もありますが、それも結構大変な作業。
さらに成分の由来にいくつか候補がある場合、自分で判断することはほぼ不可能です。
そんなときは、販売元やメーカーにお問い合わせするのがおすすめ!すぐに教えてくれますよ。
ホームページのお問い合わせからできます
【まとめ】パーム油問題を知ることから
パーム油とは “ アブラヤシ ” から採れる油のことで、実は私たちの生活を支えている油といっても過言ではありません。
他の植物油と比べて、圧倒的に収穫効率が良く、長く収穫できるのがパーム油。
そう聞くと、これからの時代に合ったサスティナブルな油では?と思う人もいるかもしれません。
もちろんメリットがたくさんあるのですが、デメリットやすでに問題となっていることがあり、早急な解決が求められています。
パーム油そのものが問題というよりも、どう生産していくか?・どう使っていくのか?ということがこれから私たちが考えるべきことです。
私たち一人一人ができることは、
ということ。
ドラッグストアやスーパーでお買い物するときは、ぜひ商品パッケージの裏面をチェックしてみてください。
RSPO認証取得済みの商品であれば、ぜひできる範囲で日常に取り入れてみてくださいね。