RSPO認証は簡単にいうと
RSPO認証とは、簡単に言うと、今まで無秩序だったパーム油の生産をルール化し管理することで、持続可能なパーム油の利用を促進し、環境問題や労働・人権問題の解決を目指すもの。
RSPOとは、Roundtable on Sustainable Palm Oilの頭文字をとったもので、日本語にすると“持続可能なパーム油のための円卓会議”といいます。

円卓会議ってなに?

参加者は上下関係なく対等という理念のもと、誰もが自由な発言ができる会議のことをいうよ
RSPOは2004年に設立された非営利組織。
パーム油の生産者、それに関わる団体、NGOや投資家などの7つのステークホルダーから構成されています。
そのRSPOから認証を得られたパーム油、パーム油をつかった製品にRSPO認証マークがつけられます。

パーム油の何が問題なの?
パーム油の生産において、地球規模の環境問題や人権問題がおこっています。
パーム油は世界でいちばん使われている植物油といわれ、世界中の国々で使われています。
もちろん日本でも生活のすべてにパーム油は関係しているので、地球上で関係ない人はいない問題のひとつだと思っています。
くわしくはこちらの記事で解説しました。
RSPO2つの認証
RSPO認証には、生産段階と流通過程にそれぞれ認証があります。
ここではその2つの認証について解説していきます。
P&C認証
P&C認証(Principles and Criteria ※原則と基準という意味)とは、生産段階の認証で、農園や搾油工場が対象となります。
P&C認証には3つのインパクト分野があり、そこから枝分かれした7つの原則、その下にある40項目の基準があります。
原則と基準に則って、持続可能なパーム油の生産が行われているか審査が行われます。
認証の有効期限は5年間と決められていますが、毎年チェックがあり場合によっては取り消されることも。
また、原則と基準は5年おきに内容が見直しされ、必要あれば新しい内容に更新されていきます。

RSPO認証の内容には、まだ不完全な部分があるといわれているよ

だからこそ、内容の見直しは大事なことだよね
SC認証
SC認証(Supply Chain Certification System)とは、原料の調達から流通までの流れ(サプライチェーン)の段階の認証のこと。
製油企業や加工業者、製造メーカーなどが対象となります。
製品ができるまでの各工程で、製品の所有権がある組織はSC認証の対象になり、RSPO認証のロゴマークをつけることができます。
RSPO認証の4つのマーク
SC認証を取得した企業はRSPOの認証マークをつけることができます。
流通スタイルによって4つのマークがあります。
IP(アイデンティティ・プリザーブド)
認証された単独の農園から、最終製品製造まで他のパーム油と完全に隔離されつくられた商品に与えられる認証のこと。
さかのぼって農園の特定ができます。
SG(セグリケーション)
認証された複数の農園から認証パーム油が集められ、最終製品製造まで非認証パーム油は混ざらない認証のこと。
農園の特定はできませんが、100%認証パーム油であることが保証されます。
IP(アイデンティティ・プリザーブド)と同じ認証マークが与えられます。
MB(マス・バランス)
認証パーム油に非認証パーム油が物理的に含まれた認証のこと。
ただし、購入された認証パーム油の量は保証されています。
また、日本では管理の問題上、MB(マスバランス)を採用する企業が多いです。
B&G(ブック&クレーム)
B&Cは、現状で認証パーム油を調達できなくても、認証パーム油の生産者を直接支援できる方法です。
P&C認証パーム油に認証クレジットを発行(証券化)し、それを購入することで生産者に還元ができるという仕組みです。
商品に使われるパーム油は非認証パーム油になります。
日本のRSPO加盟企業(美容系)
ここではRSPOに加盟している、化粧品製造販売を行っている企業を紹介します。
いきなり使用しているパーム油をすべて認証油に変えることは難しく、各企業では年度目標などを通して段階を追って認証油へと切り替えを行っているのが現状です。

あれ?でもパッケージにRSPO認証マークついてるの見たことない

実は認証を取っていてもマークをつけない企業もあるよ
花王株式会社
- 2007年RSPO加盟
- 2019年JaSPON参加、理事会メンバー
- 2025年までに小規模パーム農園までのトレーサビリティ100%を目指す
- 2025年までに花王グループで使用するパーム油をRSPO認証油に100%切り替えを目指す
- 2021〜2030年インドネシア独立小規模パーム農園支援を実施
- インドネシア独立小規模パーム農園に対してGrievance Mechanism※1を導入し、内容対応状況を公表
- パーム油工場および周辺の森林モニタリング実施。森林フットプリント※2の導入
- 様々なステークホルダーとの直接対話をもとに現場の課題認識、認証品の普及活動を実施
- 鹿島工場、和歌山工場でSC認証取得
※1 Grievance Mechanism:企業活動による人権侵害を救済するための制度や機関、メカニズム/※2 森林フットプリント:森林を破壊するおそれのある産品が影響を及ぼす森林と泥炭地の総面積
花王では認証油を使うだけではなく、
というような活動も合わせて行っています。

見えないところでこんな活動してたんだね!

パーム油問題にかなり力を入れている企業だよね
また、花王はJaSPON※にも2019年より参加し、理事会メンバーとして業界を牽引する企業でもあります。
株式会社コーセー
- 2019年RSPO加盟、JaSPON参加
- 2023年度実績 30.2%(認証原料の調達、クレジットの購入)
- 2030年度までに、コーセーグループ全体で商品に使用するすべてのパーム油由来原料について、持続可能なパーム油の100%調達を目指す
株式会社資生堂
- 2010年RSPO加盟
- 2019年JaSPON参加、理事会メンバー
- 2023年実績 パーム油由来原料100%に相当するクレジットを購入
- 2023年実績 パーム由来原料の51%を物理的な認証油に切り替え
- 2026年まで目標 100%サステナブルなパーム油の調達を達成する
- サプライヤーと協同してサステナブルなパーム油の調達に取り組む
- 全工場でSC認証取得済み
- WWFを通してインドネシア小規模農家の支援
太陽油脂株式会社
- 2011年RSPO加盟
- 2019年JaSPON参加、理事メンバー
- 2020年12月から自社化粧品は100%認証油(MB、B&C)を使用開始
- ワークショップ等でパーム油問題の提起、RSPOの普及活動を行っている
ファンケル株式会社
- 2019年JaSPON参加、正会員
- 2021年化粧品・健康食品に使用しているパーム油由来原料を全量B&Cに対応
- 2021年自社工場のSC認証取得
- 2023年1〜12月実績:MB77.9% B&C22.1%
- 2026年度MB比率目標80%
株式会社ファイントゥデイ
- 2022年4月RSPO加盟
- 2030年度目標 サステナブルなパーム油の調達100%を達成
ファイントゥデイ株式会社は、2021年資生堂からパーソナルケア事業を引き継ぐかたちで設立した会社です。
シャンプーの「TSUBAKI」や「マシェリ」など取り扱っています。
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
- 2015年RSPO加盟
- 2019年JaSPONに参加 正会員
- 2029年度目標 化粧品で使用するパーム油由来原料を100%認証油にする
- 上記目標は当社グループの役員報酬と連動
- 2023年実績 22.2%(2023年20%の目標を達成)
- 小規模農家の支援(B&C)、農園訪問など
- 主力工場(袋井工場)のSC認証取得、継続
- パーム油を取り扱う社内メンバーへのRSPOトレーニング、学習
- CSR調達(公正な事業慣行)の取り組みとして主要取引先にガイドラインの遵守のお願い、認証パーム油調達方針の説明と教育

グループブランドの「ジュリーク」も認証パーム油を使っているよ
株式会社マンダム
- 2018年RSPOに加盟
- 2021年JaSPON参加
- 福崎工場でSC認証取得、2021年からMB認証油を調達
- 2023年度には最も使用料が多い10原料について全量B&C購入
株式会社ミルボン
- 2019年にRSPOに加盟
- 2020年JaSPON参加
- 2030年までにMB、B&Cへの100%切り替え
- 2023年実績 総使用量736t 認証湯の割合9.5% MB:BC=43:57
ロート製薬株式会社
- 2024年8月にRSPOに加盟
- 持続可能な原料を選択、調達を行っていく
引用:ロート製薬|自然との共生
その他の美容関連会社
- 松山油脂株式会社(MARKS&WEB)
- 株式会社ネイチャーズウェイ
- ペリカン石鹸株式会社
- 株式会社タマノハダ
美容系以外のRSPO加盟企業
食品・日用品関連のRSPO加盟企業(一部)です。
※下記以外にも加盟企業があります。
あ行
- イオン株式会社
- AGC株式会社
- 味の素株式会社
- 江崎グリコ株式会社
- S&B食品株式会社
- 伊藤忠商事株式会社
- 株式会社オリエンタルランド
か行
- カルビー株式会社
- カゴメ株式会社
- 亀田製菓株式会社
- キューピー株式会社
- キリンホールディングス株式会社
- 小林製薬株式会社
- クラレ株式会社
さ行
- 日清食品ホールディングス株式会社
- サラヤ株式会社
- 株式会社セブン&アイ・ホールディングス
- 株式会社J-オイルミルズ
- 住友商事
た行
- ダイキン工業株式会社
な行
- 日本ハム株式会社
- 株式会社ニチレイ
- 株式会社ニッセイ
は行
- ハウス食品グループ本社
- ピジョン株式会社
- ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
ま行
- マルハニチロ株式会社
- 森永製菓株式会社
- 森永乳業株式会社
や行
- UHA味覚糖株式会社
- ユニ・チャーム株式会社
- 株式会社ヤクルト本社
- 山崎製パン株式会社
ら行
- ライオン株式会社
- 株式会社ロッテ
番外編:JaSPON参加企業
JaSPONとは、日本市場での持続可能なパーム油の調達と消費を促すため、2019年18の法人・団体で設立された団体です。
2023年4月でJaSPONに賛同し、持続可能なパーム油の調達・使用に取り組む45の法人・団体が参加しています。

JaSPONとRSPOの両方に参加・加盟している企業が多いみたい
RSPOには加盟していませんが、2023年に良品計画(無印)が新たにJaSPONに正会員として参加になりました。
良品計画では2050年までに国内で販売しているパーム油使用商品について、持続可能なパーム油を使うことを目標としています。(※)
RSPO加盟企業は年々増えてきている
日本企業でもRSPOに加盟したり、パーム油問題に取り組む動きが増えてきましたが、全体でみるとまだ少ないのが現状です。

国別のRSPO加盟状況がこちら

2024年9月のデータでは約320の日本企業・団体が加盟しているので、増えてきてはいるよ
RSPOに加盟したり認証油を使ったりすることは、企業側にとって労力やコストがかかってしまうこと。
それでも大企業や有名企業が率先してパーム油問題に取り組むことは、社会への影響力もありますし大きな意味があります。
これから認証パーム油を選ぶ企業が増えることを願って、私たち消費者は認証パーム油を使う企業を応援していければいいなと思います。
消費者ができることは「知る」「購入する」
パーム油問題のためにできることといえば、いちばんわかりやすいのはRSPO認証マークのある商品を買うこと。
でも認証マークがなくてもパーム油問題に取り組んでいる企業はたくさんあります。

調べてみるとたくさんの企業が取り組んでいました
パーム油問題に取り組んでいる企業を応援する意味で、その企業の商品を購入するのもひとつ。
企業にとって今やサスティナブルへの取り組みを行っていないことはマイナスな印象へと繋がりますし、消費者だけでなく投資家から見ても良い印象ではありません。

ただ、環境に良いと見せかけているだけの企業(グリーンウォッシュ)には注意が必要!
例えば、いつも使っている商品の企業がどんな取り組みをしているのか?公式ホームページからチェックしてみることもおすすめ。
パーム油など原料調達についてや、サスティナブルな取り組みや目標・実績がきちんと明記してあるかで、その企業がどれくらい取り組んでいるのかがわかります。
まずは自分が使っているものなど身近なところから知っていくことが、問題解決につながる第一歩だと私は考えています。